8. 筋トレ後の「2時間」が運命を分ける?筋肉を効率よく増やすためのプロテイン摂取ゴールデンタイム

食事

参考文献:Esmarck et al., Timing of postexercise protein intake is important for muscle hypertrophy with resistance training in elderly humans, The Journal of Physiology, 535(1), 301-311, 2001.

日々のトレーニングに励んでいる皆さん、せっかく一生懸命に体を追い込んだのに「なかなか筋肉がつかないな」と感じたことはありませんか?食事には気を使っているつもりでも、摂取するタイミングまで厳密に意識するのは少し面倒に感じてしまうかもしれません。しかし、実は運動後にプロテインを飲む「ほんの少しの時間差」が、数ヶ月後の成果を劇的に変えてしまう可能性があるのです。もし今のあなたの努力が、たった一つのタイミングの差で無駄になっているとしたら、これほどもったいないことはありません。

この論文の結論を一言でいうと、「運動直後のタンパク質摂取は、たとえ2時間後であっても遅らせて摂取する場合より、明らかに筋肉の成長を促進する」ということです。

研究では、平均年齢74歳の男性13名を対象に、週3回、計12週間のレジスタンストレーニング(筋力トレーニング)を実施しました。参加者は、運動直後(5分以内)にタンパク質・糖質・脂質を含むサプリメントを摂取するグループ(P0)と、運動の2時間後に全く同じものを摂取するグループ(P2)の2つに分けられました。12週間後、運動直後に摂取したグループでは、太ももの筋肉(大腿四頭筋)の断面積(CSA ※1)が7%、個々の筋線維の面積(MFA ※2)が22%も増加していました。一方、2時間後に摂取したグループでは、これらの数値に有意な増加は見られませんでした。また、筋力についても、直後摂取グループは測定したすべての項目で向上しましたが、2時間後グループは一部の向上にとどまりました。この研究は、加齢に伴う筋肉の萎縮を防ぐ上で、栄養摂取の「タイミング」が極めて重要であることを示しています。ただし、対象が少人数の高齢男性であるため、すべての人に同様の結果がそのまま当てはまるとは限らないという点には注意が必要です。

※1 筋肉の断面積(CSA):筋肉を輪切りにした際の面積。筋肉全体のボリュームや太さを評価する指標。 ※2 筋線維の面積(MFA):筋肉を構成する一本一本の細胞(筋線維)の太さ。

重要ポイント

1. 筋肉の「受け入れ態勢」には時間制限がある

トレーニングを行うと、筋肉内では新しいタンパク質を作り出すスイッチが入りますが、このスイッチが最も活発に働く時間帯は限られています。今回の研究では、2時間経ってしまうとそのスイッチの効果を十分に活かせず、筋肉の成長(筋肥大)が起きなかったことが示されました。トレーニング直後の筋肉は、いわば「栄養を吸い込みたがっている乾いたスポンジ」のような状態なのです。

2. 「筋力アップ」と「筋肉を太くすること」は別物

興味深いことに、2時間後に摂取したグループでも、トレーニングで扱える重さ自体は向上しました。しかし、それは神経系が動作に慣れたことによるもので、筋肉そのものが太くなったわけではありませんでした。見た目を変え、長期的に動ける体を維持するための「筋肉の成長」を引き出すには、やはり直後の栄養補給が不可欠です。

実践的なアドバイス

トレーニングが終わったら、着替えやシャワーを済ませる前に、まずは何よりも先にタンパク質を補給することを鉄則にしましょう。具体的には、運動終了から5分以内に摂取できるよう、シェイカーにプロテインパウダーを入れて持参するのが最も確実な方法です。もしプロテインが用意できない場合でも、コンビニなどで手に入るサラダチキンや牛乳、ギリシャヨーグルトなど、タンパク質を手軽に摂れるものをあらかじめ準備しておきましょう。

やりすぎないための注意点として、今回の研究で効果が確認されたタンパク質量は1回あたり約10gと、実はそれほど大量ではありません。無理に一度に大量のプロテインを飲んで胃腸に負担をかけるよりも、まずは「終わったらすぐ飲む」というタイミングを習慣化することから始めてみてください。なお、体調が優れない時や、食事制限を伴う既往症がある方は、無理に摂取内容を変えず、必ず医師の指示に従ってください。

この研究は、タンパク質摂取のタイミングが筋肉の適応に劇的な差を生むことを証明した貴重なデータですが、被験者が13名と非常に少なく、個人の体質によるばらつきを完全に排除できていない可能性は否定できません。また、実生活に応用する際の「落とし穴」として注意すべきなのは、運動直後の摂取さえ守れば、1日の他の時間帯の食事が適当で良いというわけではない点です。筋肉を作るための材料は常に必要であり、1日のトータルでのタンパク質摂取量が不足していれば、たとえタイミングが完璧でも、期待するような筋肉の成長は得られないでしょう。

あなたの流した汗と努力を、確かな「筋肉の成長」という結果に変える最後のピースは、運動直後の一杯です(お酒ではありません)。明日からのトレーニング、終わった瞬間の補給を忘れずに、理想の体への最短ルートを突き進みましょう!