3. 伸び悩むランナー必見!週2回の「バネを鍛える筋トレ」が5kmのタイムを劇的に縮める理由

筋トレ系

参考文献:Paavolainen et al., Explosive-strength training improves 5-km running time by improving running economy and muscle power, J. Appl. Physiol., 86(5), 1527–1533, 1999.

毎日のジョギングを欠かさず、持久力を高めるためのインターバル走もこなしている。それなのに、大会でのタイムがここ数年、全く更新されない……そんな壁にぶつかっていませんか?走行距離を増やしても、心肺機能の指標である数値が上がっても、実際のタイムに結びつかないのは非常にもどかしいものです。「心肺機能は高いはずなのに、なぜかスピードが上がらない」と悩んでいるなら、あなたのトレーニングに欠けているのは「走りのバネ」を鍛える視点かもしれません。 実は、筋肉を大きくすることなく、走りの効率を劇的に変える科学的なアプローチが存在します。

この研究の結論を一言でいうと、「持久力トレーニングの一部を『爆発的な筋力トレーニング』に置き換えることで、持久力の指標を変えずに5km走のタイムを短縮できる」というものです。

フィンランドの研究チームは、22名のトップレベルの男性クロスカントリー走者を対象に、9週間にわたる実験を行いました。彼らを、従来の持久走を中心に行うグループ(対照群)と、トレーニング時間の約32%を爆発的な筋トレやスプリントに置き換えたグループ(実験群)の2つに分け、走行ボリューム(総時間)は同じに設定しました。その結果、爆発的なトレーニングを取り入れたグループは、最大酸素摂取量(VO2max)に変化がなかったにもかかわらず、5km走のタイムが平均で3.1%も向上したのです。一方で、従来の持久走のみを続けたグループは、最大酸素摂取量は向上したものの、5km走のタイムに変化は見られませんでした。

(※注:最大酸素摂取量(VO2max)とは、体が1分間に取り込める酸素の最大量で、持久力の代表的な指標です。走りの経済性(ランニングエコノミー)とは、一定の速度で走る際にどれだけ酸素を節約できるかという、いわば走りの「燃費」を指します。最大無酸素ランニング速度(VMART)とは、酸素を使わずに運動する能力と神経系の能力を合わせた、全力疾走能力の指標です。)

研究の前提として、この実験はすでに高度なトレーニングを積んだアスリートを対象としており、運動経験や性別によって結果が異なる可能性があるため、すべての人に当てはまるとは限らない点に注意が必要です。

ポイント整理

第一に、持久走のパフォーマンスを決定するのは心肺機能(エンジンの大きさ)だけではなく、神経系が司る「筋肉のバネ(マッスルパワー)」であるという点です。研究では、爆発的なトレーニングを行ったグループで、地面に足が着いている時間(接地時間)が短縮されたことが示されました。これは、着地の衝撃を素早く反発力に変える能力が高まったことを意味します。たとえるなら、持久力(最大酸素摂取量)が向上しなくても、神経系を鍛えて足の「バネ」を強化することで、走りの効率が劇的に良くなるのです。

第二に、このトレーニングの大きな特徴は、筋肉を太く重くすることなく、その「質」を変えられることです。一般的に筋トレというと筋肉が肥大して体が重くなるイメージがありますが、この研究で行われた「低負荷・高速度」のトレーニングでは、筋肉のサイズ(ふくらはぎや太ももの太さ)は変わっていませんでした。これは、筋肉そのものが大きくなったのではなく、脳から筋肉への命令がより速く、より正確に伝わるようになる「神経系の適応」が起きたためと考えられます。

第三に、このバネの強化は「疲労している場面」でこそ真価を発揮します。研究グループは、乳酸が溜まって体が動かなくなるような過酷な状況下でも、高いパワーを維持できる能力が向上したと指摘しています。レース後半の粘り強さは、根性だけでなく、こうした科学的な「パワーの出し方」に支えられているのです。

実践アドバイス

これからは、週に1〜2回、いつものジョギングの時間を少し削って、以下のメニューを取り入れてみましょう。

1. 全力に近いスプリント(20m〜100m)を数本取り入れる。

2. 連続ジャンプやハードルジャンプなど、自分の体重を素早く跳ね返す運動(プライオメトリクス)を行う。

3. 筋トレを行う際は、重いものをゆっくり持ち上げるのではなく、軽い負荷(最大筋力の40%以下)で「可能な限り素早く」動かすことを意識する。

普段のジョギングの一部を、全力に近いダッシュや連続ジャンプに置き換えるだけで、走りの「バネ」が鍛えられ、タイム短縮への近道となります。

ただし、やりすぎないための注意点として、これらのメニューは神経系への負担が大きいため、必ず体調が良い時に行い、週2回程度に留めておくことが大切です。もし関節に痛みがある場合や、持病がある方は決して無理をせず、専門家や医師に相談してから開始してください。

この研究は、被験者が18名と比較的少数であり、全員がエリートレベルの男性ランナーであったため、一般の初心者や女性、高齢者にそのまま適用できるかどうかには慎重な議論が必要です。実生活で応用する際の「落とし穴」としては、爆発的な動きは関節や腱に急激な負荷をかけるため、十分なウォーミングアップや、基礎的な筋力がない状態で始めると怪我のリスクが非常に高いという点が挙げられます。

タイムが伸び悩んでいるのは、あなたが限界に達したからではなく、まだ「眠っている神経」があるだけかもしれません。ただ長く走る練習から一歩踏み出し、週に数回の「爆発的な動き」を取り入れることで、あなたの走りはもっと軽やかで力強いものに変わるはずです。科学の力を味方につけて、自己ベスト更新という最高のウェルビーイングを手に入れましょう!