7. 筋トレだけ、有酸素だけじゃ損してる!?糖代謝を劇的に変える「欲張りセット」の驚くべき効果

環境・社会

参考文献:AbouAssi et al., The effects of aerobic, resistance, and combination training on insulin sensitivity and secretion in overweight adults from STRRIDE AT/RT: a randomized trial, Journal of Applied Physiology, 118(12), 1474–1482, 2015.

健康のために、あるいは理想の体型を目指して、日々トレーニングに励んでいる皆さんに質問です。「今日はランニングにするか、それともジムで重いものを持ち上げるか」と迷ったことはありませんか。あるいは、一生懸命走っているのに、思うように健康診断の数値が改善しないと悩んでいる方もいるかもしれません。もし、あなたが「効率よく健康になりたい」と願うなら、どちらか一方を選ぶのではなく、両方を組み合わせることが、あなたの体内のエネルギー工場を劇的に変える鍵になるかもしれません。

この論文の結論を一言でいうと、「有酸素運動と筋トレを組み合わせることで、単独で行うよりも劇的にインスリン感受性が向上し、その効果は運動を休んでも長く続く」ということです。

研究チームは、18歳から70歳までの、座りがちな生活を送っていて体重が多めの男女196名を対象に、8ヶ月間にわたる実験を行いました。参加者は「筋トレのみ」「有酸素運動のみ」「両方の組み合わせ(欲張りセット)」の3グループに分けられ、それぞれの効果が比較されました。その結果、インスリン感受性(インスリンの効きやすさ)、糖有効性(細胞が自力で糖を取り込む力)、および膵臓のβ細胞の機能(インスリン分泌指数)のすべてにおいて、最も大きな改善が見られたのは「欲張りセット」のグループだけでした。一方で、意外にも筋トレのみ、あるいは有酸素運動のみのグループでは、これらの指標に顕著な改善は見られませんでした。ただし、この研究は主に運動不足で過体重の成人を対象としており、すべての人にこの結果がそのまま当てはまるとは限らないという点には注意が必要です。

※注 ・インスリン感受性:膵臓から出るホルモン「インスリン」が、血液中の糖分を細胞へスムーズに届けるための「鍵」としてどれだけ効果的に働いているかの指標。 ・インスリン分泌指数:血糖値が上がった際に、膵臓の細胞がどれだけ適切にインスリンを分泌して対応できているかを示す「膵臓の元気さ」の指標。 ・糖有効性:インスリンの助けがなくても、細胞が血液中の糖を自分から取り込むことができる「自律的な処理能力」。

重要ポイント

第一に、有酸素運動と筋トレの組み合わせは、まさに「1+1が3にも4にもなる」相乗効果を生み出します。たとえば、有酸素運動を「工場の燃費を良くする作業」、筋トレを「工場の設備を増やす作業」だと考えてみてください。どちらか一方だけでもメリットはありますが、設備を増やしながら燃費も良くする「欲張りセット」を行うことで、体内の糖分という燃料を処理する能力が、単独で行うよりもはるかにパワフルになるのです。

第二に、この「欲張りセット」で得られた健康効果は、非常に「長持ち」するという点です。研究では、最後の運動から14日間トレーニングを休んだ後でも、向上したインスリンの効きやすさの約52%が維持されていることが分かりました。これは、運動によって体に「健康の貯金」が積み立てられ、たとえ忙しくてしばらくジムに行けなくなっても、その資産がすぐには底をつかないことを意味しています。

実践的なアドバイス

まずは、現在どちらか一方の運動しかしていない方は、メニューに「もう片方の要素」を少しだけ加えてみてください。たとえば、いつもランニングをしている人なら、走る前か後に15分だけスクワットや腕立て伏せを取り入れる、逆に筋トレ中心の人は、最後に20分だけ早歩きや軽いジョギングを加えるといった具合です。研究では両方をフルボリュームで行うことで最大の効果が得られましたが、まずは無理のない範囲で、週に数回、両方の刺激を体に与えることが「糖を処理しやすい体」への第一歩となります。

ただし、やりすぎないための注意点として、いきなり両方の運動量を最大にしてはいけません。欲張りすぎて疲労が溜まりすぎると、かえって怪我のリスクが高まったり、トレーニングの質が落ちてしまったりする恐れがあります。もし、体調が優れない時や持病がある場合は、決して無理をせず、医師の指導に従いながら自分のペースで進めてください。

この研究は非常に優れたデザインですが、「欲張りセット」のグループが他のグループの2倍の時間を運動に費やしていたため、効果の差が「運動の種類」によるものなのか、単に「運動の総量」によるものなのかを完全に区別できていないという側面があります。実生活で応用する際の落とし穴としては、「両方やらなければならない」という強迫観念から、合計の運動時間が長くなりすぎて、結局継続できなくなってしまうことが挙げられます。

ランニングと筋トレ、どちらもあなたの体にとっては最高のギフトです。二つを組み合わせることで、あなたの体はもっと自由に、もっと健康に動き始めます。明日のトレーニング、少しだけ「欲張り」になってみませんか。