24.「強くなる」には1日13分で十分!?筋肉を「大きくする」ためのセット数とは?

筋トレ系

参考文献:Schoenfeld et al., Resistance Training Volume Enhances Muscle Hypertrophy but Not Strength in Trained Men. Medicine & Science in Sports & Exercise, 51(1), 94-103, 2019.

仕事や家事が忙しくて、「ジムに行く時間が確保できない」「セット数をこなすだけで疲れてしまう」と諦めかけていませんか? 雑誌やSNSでは「3セットやらなければ意味がない」「いや、ハイボリュームこそ正義だ」といった情報が飛び交い、結局どれが正解なのか迷ってしまうことも多いはずです。 もし、たった13分のトレーニングでも、1時間以上かけた場合と同じくらい「筋力」がアップするとしたらどうでしょうか? 「時間がなくてジムに行けない」「結局、何セットやればいいのか分からない」そんな悩みを抱えていませんか? 今回は、そんな忙しい現代人の背中を押してくれる、画期的な研究結果をご紹介します。

この論文の結論を一言でいうと、「筋力アップなら低ボリューム(短時間)で十分だが、筋肉を大きくしたいならセット数を増やす必要がある」ということです。

この研究は、筋トレ経験のある男性34名を対象に行われました。彼らを以下の3つのグループに分け、8週間にわたり同じ種目(ベンチプレスやスクワットなど)を行ってもらいました。

1. 低ボリューム群(1SET): 各種目を1セットのみ実施(1回の平均トレーニング時間:約13分)

2. 中ボリューム群(3SET): 各種目を3セット実施(1回の平均トレーニング時間:約40分)

3. 高ボリューム群(5SET): 各種目を5セット実施(1回の平均トレーニング時間:約68分)

すべてのグループにおいて、セット間の休憩は90秒、回数は8〜12回で「限界がくるまで※」行うという条件で統一されました。 その結果、驚くべきことが分かりました。 まず、スクワットやベンチプレスの「最大筋力(1RM)」と「筋持久力」の向上については、3つのグループ間で差がありませんでした。つまり、1セットしかやらなくても、5セットやった人と同じくらい力持ちになったのです。 一方で、腕や太ももの「筋肉の厚み(筋肥大)」に関しては、セット数が多いほど効果が高いという傾向が見られました。特に上腕二頭菌や太ももの筋肉は、5セット行ったグループが最も大きく成長していました。

※限界がくるまで:正しいフォームでこれ以上1回も持ち上げられない状態を指します

重要ポイント

1. 「強さ」はコスパ良く手に入る

重いものを持ち上げる「パワー(筋力)」をつけるためなら、何時間もジムにいる必要はありません。この研究では、1回13分のトレーニング(各種目1セット)でも、1回約70分かけた場合と同じだけ筋力が向上しました。 これは勉強に例えるなら、**「テストの点数(筋力)を取るだけなら、要点を絞った1時間の集中学習(1セット)でも、5時間の勉強と同じ結果が出せる」**ということです。忙しいビジネスパーソンにとっては朗報と言えるでしょう。

2. 「見た目」を変えるには投資が必要

一方で、ボディビルダーのように筋肉を「太く・大きく」したい場合は、話が変わってきます。筋肉のサイズアップに関しては「やればやるほど効果が出る(用量反応関係)」ことが示されました。 これは貯金に例えられます。「口座の残高(筋肉のサイズ)を増やしたければ、コツコツと少額を積み立てるよりも、一度に多くのお金(セット数)を入金した方が早く貯まる(貯”筋”ですね)」というわけです。実は、「筋力(パワー)」を伸ばすだけなら、1回のトレーニングで各種目1セット行うだけでも、5セット行った場合と同じくらい効果があることが分かりました。

実践的なアドバイス

忙しい日は「割り切って1セット」

「今日は時間がないからジムに行くのをやめよう」ではなく、「1セットだけ本気でやって帰ろう」に切り替えましょう。たった13分でも、筋力を維持・向上させるには十分な効果が期待できます。種目はスクワットやベンチプレスなどの主要なものに絞りましょう。

目的によってメニューを使い分ける

もしあなたの目的が「健康維持」や「スポーツのパフォーマンス向上(筋力アップ)」なら、全身を各1セットで回すメニューで十分です。逆に、「Tシャツの袖がパンパンになる腕を作りたい」という場合は、腕の種目だけセット数を3〜5セットに増やすなど、部位によってメリハリをつけるのも賢い方法です。

セット数を増やす場合、やりすぎ(オーバートレーニング)には注意が必要です。研究でも、高ボリューム群(5セット)はトレーニング時間が長く、関節への負担や疲労も大きくなる可能性があります。いきなりセット数を倍にするのではなく、少しずつ増やしていきましょう。

この研究結果は非常に勇気づけられるものですが、実生活に応用する際には「落とし穴」があります。 論文では「限界(失敗)まで追い込む」ことを条件としていますが、1人で行うトレーニングで、たった1セットで本当に限界まで力を出し切るのは精神的にも技術的にも非常に難しいということです。 「1セットでいい」というのは「楽をしていい」という意味ではありません。1セットに全集中力を注ぎ込む覚悟が必要です。

「時間がない」は、もうトレーニングを諦める理由にはなりません。 たった1セットでも、昨日の自分より強くなれることが科学的に証明されています。 まずは明日、13分だけ自分の体に投資してみませんか?その小さな積み重ねが、数ヶ月後には確かな「強さ」となって返ってくるはずです。